開湯から1800年を迎えるとされる由緒ある温泉。こじんまりとした温泉街にある源泉は約20。かつては長期滞在する湯治客も多く、たくさんの方が杖立の湯と蒸し料理で心と体をいやしました。泉質は、天然の保湿成分といわれるメタ珪酸(ケイサン)を多く含み、肌をやさしく包み込む化粧水いらずの湯。いまも昭和の時代の薫りをそこかしこに残す杖立温泉の伝統風呂といえば、そう。“むし湯”です!

参考プラン
-
杖立温泉
観光協会 -
立ち寄り湯
-
むし湯を
2件ほど
はしご -
むし場
-
足湯
「御湯の駅」 -
杖立プリン
頭からつま先まですっぽりと
“蒸される”湯へ
「“むし湯”に3日も通えば、みんな顔がきれいになってくるんよ」と笑顔で話すのは、「新ひたや」の女将・高崎とし子さん。「顔がきれいになる」とは、単に血行がよくなったり、肌つやがよくなったりすることだけではなく、「表情が明るくイキイキとしてくる」ということのよう。なるほど、女将の顔もぴかぴかしています。
「むし湯ってサウナと何が違うの?」と思いますよね。実はまったく違うんです。いまも伝統的なむし湯の姿を残すこちらは、昭和の初期ごろからはじめたという貴重なむし湯が体験できる場所。浴室横の小さな扉をひらいて中に入ると…穴蔵のような小さな部屋が広がっていました。思ったよりうす暗く、ちょっぴり尻込みしちゃいましたが。ちょっとどきどきしつつも、いざ入浴といきましょう。




温泉を下に貯めて、その温熱により入浴するむし湯。身体にタオルを巻いてごろんと寝転がりそっと目をつむると…数分も経たないうちに、全身から汗がぽつぽつ。首までしか浸かれない温泉と違い、頭からつま先まですっぽりと、やわらかい温泉に包まれている感覚に。このなかで、腕や首などの赤すりを行い、むし湯を出て温泉に浸かる。これを数回繰り返すことで、全身の発汗や血液循環の改善をうながしてくれるのだそうです。
もともと地元の人は、「風邪をひいたらまず“むし湯”」というほど生活に馴染んでいるものだとか。浸かりかた(楽しみかた)はサウナと似たようなところがありますが、空気を暖めて発汗作用を及ぼすサウナと違い、蒸気による温熱浴法。「汗が蒸発しないため、体温の拡散が妨げられること。肌から直接温泉の成分を吸収できること」がポイントだと教わりました。
座るタイプの“箱むし”で気軽さと楽しさを届ける
天然サウナの“むし湯”は、宿によって備えているタイプがそれぞれ。次にお邪魔したのは、創業150年になる老舗旅館「純和風旅館 泉屋」さんです。ちょっと変わった“むし風呂”があると聞きいてやってきました。「うちの蒸し風呂のひとつは座るタイプの湯。ずばり“箱むし風呂”です」。案内されて蓋をあけると、ひのきの薫りが漂う箱の中に椅子が一脚。そこに腰をかけて、蓋をし、上から頭を出して…むし湯を全身でじっくり堪能するというわけです。
「こちらは平成元年にこの建物を建てたときに設置しました。だいたいは横になって入るタイプがメジャーなんですが、薄暗くてちょっと入りづらいという声がお客さんからあったので。せっかくの杖立名物ですので、もっと気軽に楽しんで入ってもらえるむし湯をつくろうと思ったのがきっかけです」。


もちろんこちらも初挑戦!蓋を開けて顔をひょっこり出すと、正面から見ても横から見てもちょっと不思議な画にみえますが…「あかるい浴室内にあって、これなら初心者の方も気軽に入れるオープンな雰囲気。友達とも並んで入れていいなあ…」なんて考えている間もなく、額には汗がびっしり!手の先、足の指一本一本まで、じわじわと温かさがひろがっていくのがわかります。
「杖立温泉は弱塩泉の泉質なので、体を芯から温めてくれるんです。あがったあともずっとぽかぽかとしているのが特徴。だいたいが飲用できる源泉で、硫黄分がほとんど入っていないので、蒸気を鼻から吸うことで気管支もなめらかになりますよ」。


時間はお好みだが、じっくり蒸されるので比較的長い間入れる。

ちなみにトリートメントした髪をタオルで巻いて入れば、髪もつやつやになるそう! 今回ご紹介した「新ひたや」さん、「泉屋」さん以外にも、杖立温泉の各宿に“むし湯”はありますので、くわしくは観光協会にお尋ねを。かつてのように長期滞在でなくても、「プチ湯治」感覚で。温泉とむし湯を時間をかけて堪能すれば、肌も心も、思いっきりリフレッシュできるはずです。